大会担当 早瀬 博範

 九州アメリカ文学会第53回大会は、去る5月12日と13日の両日、九州大学六本松キャンパスにて開催された。今回も、多くの方々の新しい研究成果に大いに刺激された2日間となった。発表は、ベテラン研究者の長年の研究に裏打ちされた重厚なものから、大学院生の独創性に富んだ果敢なものまであり、さらに、取り上げられた作家も、メルヴィル、フォークナー、モリスンといったメジャーな作家から、1999年に亡くなったポール・ボウルズ9/11直後、The Kite Runnerを発表し話題となったアフガン・アメリカン作家カーレド・ホセイニといった、これから評価が待たれる作家まで多彩であった。どの発表も精緻な読みと深い考察に裏打ちされていて、会員の層の厚さとレベルの高さの証明となっていた。

シンポジウムは、「ジョン・ブラウンの屍を超えて―南北戦争とその時代」だった。高橋勤氏が司会兼講師を務められ、ほかに講師として、小倉いずみ氏と松本昇氏、さらにコメンテーターとして、茨城大学から君塚淳一氏を招いて行われた。目下、アメリカ・ルネッサンス期の「脱神話化」が盛んであるが、ここでは、ソローとエマソンの脱神話化について、数々の貴重な文献に基づいて行われ、作家の実像に迫る、非常にスリリングな内容であった。参加者に、異口同音に「今日は来た甲斐があった」と言わせるものだった。二日目ということで参加者が少なかったのが残念であったが、参加したものは、とても得した気分だった。

今大会の特別講演は、東京大学から柴田元幸氏をお招きし、「1990年代以降の世界文学―アメリカ文学を中心に」という演題で、ご講演をいただいた。このときは、会員以外の方も多く参加いただき、大教室が一杯に埋め尽くされた。90年代は、ポストモダンに変わり、リアリズムが復活し、さらには、家族というテーマに回帰しているというのが大まかな概要であったが、それを具体的な作品と、さらには、引用箇所まで上げられ、論証が行われた。エイミー・ベンダー、ケリー・リンク、マシュー・シャープ、ポール・ラファージ、ジェフリー・ユージェニデス・・・と、次から次へと作家や作品引用と的確な読みが紹介された。90分間に一体どれだけの作家と作品に言及されただろう。先生の膨大な読書量の海の中に投げ込まれ、圧倒され、刺激され続けた。講演後の質疑も活発で、啓発的なご講演であったことを示していた。先生には、懇親会にも参加いただき、お陰で楽しい会となった。

本年度から、事務局が佐賀大学に移るため、大会の担当は、高橋勤氏にお願いすることになった。次回の開催は、佐賀大学を予定している。本大会での研究発表は、われわれの活動をもっとアピールする場であり、そこを基盤として、今後の発展もある。会員の皆様の積極的なご応募をお願いします。

 NewsLetter35

九州アメリカ文学会第53回大会報告