ミシシッピ大学研修記
福岡大学 樋渡 真理子(mhiwatashi@olemiss.edu)
九州アメリカ文学会のみなさま、お元気でお過ごしでしょうか。私は8月中旬よりミシシッピ大学に研修に来ております。
Ole Missの愛称で知られているミシシッピ大学は、テネシー州にあるメンフィス国際空港から自動車で約1時間ほど南下したオックスフォードに位置しています。オックスフォードは緑が豊かなスモールタウンです。みなさまもご存知のようにアメリカではダウンタウンが機能していない町が多いのですが、この町はその点では数少ない例外の一つです。ダウンタウンは "Square" という愛称で呼ばれ、William Faulknerの小説でもおなじみのCourt Houseがその中心にあり、市役所の前には、十年ほど前にその設置が物議を醸したフォークナーの銅像があります。また、SquareにはMayorが経営しているSquare Booksという2階建ての書店があり、愛書家にとっては嬉しいところです。 8月29日にはHurricane Katrinaがミシシッピ州の南部湾岸地域を中心に猛威をふるいました。幸いなことにオックスフォードは惨事を免れ、被害も最小で済みました。それでも、私が住んでいるアパートでは丸一日電気の供給が途絶えたため、クーラーがきかなくなり、冷凍庫に入っている食べ物も次々と溶け出しました。キャンドルの明かりで一夜をしのいだほか、インターネット回線が一週間近く遮断されました。水道や電気の供給が途絶え、復旧までに数日かかったところもあり、また、陸路が閉ざされたためにガソリンの値段が高騰しどのガソリンスタンドもガソリンがない、という状態がしばらく続きました。教会は他の町から避難してきた人々で溢れ、通りには避難してきた人たちが生活費を賄うためにCar Washの看板を掲げているなど、町のようすもハリケーンを機に変わりました。実際、このままでは犯罪が多発するのではないかという不安が地域住民の間に広がりました(オックスフォードは大学町でもあるため、治安の良い町だったからです)。特に被害が甚大だった、New Orleansでは次々に大学が一時閉鎖され、ミシシッピ大学でも学期の途中からかなりの数の学生、研究者の受け入れが始まりました。また、New Orleansは南部の人々にとってはことのほか、思い入れの強い街ですので、テレビでのニュース放映が辛くて観ることができない、と涙を浮かべて語る人も少なくはありませんでした。 9月25日にはフォークナーの生誕記念(108回)の映画上演会が催されました。フォークナーの家であるRowan Oakの庭園での上演が予定されていましたが、雨天のため、大学の美術館の一室での上映へと変更されました。フォークナーの本が原作となり映画化されたThe Reivers (1969) と、フォークナーが生前毎回楽しみにしていたというコメディ番組Car 55 Where Are You? の1961年9月24日にテレビ放映されたエピソードが上映され、英語学科主任のJoseph Urgo教授が作品解説をしてくださいました。印象的だったのは、その日は日曜日の夕方で悪天候だったこともあり、参加者も多くはありませんでしたが、地元出身の作家フォークナーの文学を一般の方々に広めようと努力を惜しまないUrgo教授の姿勢でした。
10月12日にはRowan Oakの玄関ポーチにてNational Book Awardの候補者発表が行われました。オックスフォード在住のJohn Grishamによって発表が行われ、最終選考に残った作家が分野別に発表されました。今や大金持ちのGrishamが、「僕は選ばれたことがないけれど、お金をたくさんもらえるなんて羨ましいよ」と冗談を飛ばして会場を盛り上げました。詳細はこちらで確認できます。http://www.nationalbook.org/nba2005_finalistpr.html 最終的に選ばれたのは、Nonfictionの部門ではパートナーであるJohn Gregory Dunneを失った悲しみと自分の人生を綴って見事なカムバックを果たしたJoan Didion のThe Year of Magical Thinking と、詩の分野では環境文学でも特に注目を浴びているW.S. Merwin のMigrationが受賞しました。 また、来年のことになりますが、7月23日から27日にかけてFaulkner and Yoknapatapha Conference では "Global Faulkner" というテーマで学会が開催されます。詳細はこちらをご覧ください。http://www.outreach.olemiss.edu/events/faulkner/
おかげさまで、充実した研究生活を送っております。またみなさまとお目にかかれる日を楽しみにいたしております。
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